2008年11月24日月曜日

Eagle River -part 2-


どれだけ頭の中で準備をしていても、こればかりは拭えなかった。
初めて見た野生の熊の足跡に緊張が走る。これは10月4日に出かけた時のもの。足跡は2、3日は経っているだろうか。動物園と違い、柵など無い。冷静に周囲の情報を得ようとしたが、なかなか次の行動に移せない。この写真を撮っている最中も常に聴覚だけは外部に注意を向けていた。この足跡は、森の中を少し抜けた川の中州のようなところで発見した。
野生の熊が人間を襲う事は実は非常に稀なことで、母親とその小熊の間に立ってしまった場合のみ、ほぼ100%襲われる。したがって、小さな熊を見つけた場合がもっとも注意を払わなくてはいけない状況と言える。しかし野生ではない熊であった場合には状況が異なる。半野生の熊のことである。彼らは人間慣れしているため、平気で近寄ってくるそうだ。ひとが襲われた事件のほとんどがこの半野生の熊による。この川の中州は町からさほど離れていないところで、耳を澄ませば自動車の音が聞こえてくるくらいの場所。完全な野生の熊か半野生かなど判断のしようがない。足跡くらいで緊張している場合ではないが、想像と実情はかけ離れていた。

2008年11月17日月曜日

Chase the wolf -part 3-

フェアバンクスへ行った時にアラスカ州魚類狩猟局(ADF&G)に行くことができた。運良くオオカミの研究を以前やっていた学者に会うことができた。ロニィーボーティーという生物学者で、今はオオカミ研究を終えて、引き続きそれと関連性のあるムースの生態を研究している。彼の部屋にはこれから使用する新しいムースのラジオカラー(生態調査のために個体につける首輪。無線でキャッチできるようになっている)が3つ床においてあった。オオカミの物と比べるとかなり大きかった。失礼ながら挨拶みたいな話はすぐに済ませて、率直にオオカミを見つけたいんだけれどもどこで一番見つけられるのか。アンカレッジの近くで見つけることは可能か。といった内容を質問した。研究者にとってつまらない質問ではあるけれど、丁寧に答えてくれた。

「デナリに行かないと、写真で撮るのはほぼ不可能だよ」
「オオカミは君が近づくずっと前から君の存在に気づいていて、避けようとするから」

「足で近づくということはやっぱり難しいですよね。」
「そうだね」

「デナリでは冬でも見ることができますか?」
「たぶん。雪をバックに撮るのはいいかもね。」

「一番いいアプローチ方法は何ですか?」
「僕ら研究者がやっているように飛行機で無線を使って追うという確実な方法があるけど・・・。」

「むずかしいですね(笑)」

「最後にすみません。デビッドメッチさんは今でもここへ頻繁に訪れるのですか?」
「頻繁ではないけど、くるよ。いつ来るかは僕にはわからないなあ。いまは僕はオオカミに直接関わってないからね。」

「あなたの研究書類をなにかもらうことはできますか?」
「古いやつだけど、これ。」

「ありがとうございました。」

彼の学会で発表した資料をもらって部屋を出た。なぜ研究対象を変えたのか尋ねたが、ムースの個体数の方が今は重要だと言うことしか聞き取れなかった。もっとたくさん話してたはずだけど。もっと英語に慣れなくては、詳細情報が得られない・・・。

(ちなみに会話の中のデビッドメッチとはミネソタ大学のオオカミ博士のことである。オオカミといえば Mech という印象が僕の中にはある。)

彼がくれた資料を早速読んでみた。カナダの学会用のものは『ムースの個体群動態に伴うオオカミの繁殖率の変化について(1992)』。ワイルドライフジャーナルに寄稿されたものは『オオカミコントロールによる有蹄類の増加について(1996)』オオカミコントロールをうまく訳せないけれど、この魚類狩猟局と連邦政府がオオカミの数が増えすぎないように個体数を管理している。増えすぎた場合は狩猟制限を緩めたり、屠殺したりして調整している。そのことである。有蹄類とは、蹄(ひづめ)のある哺乳類、ムース、カリブー、エルク、などなど。研究対象を変えたとはいえ、彼は食物連鎖の一点を研究しているに変わりはなかった。焦点をオオカミからムースに変えたことで何がわかったのだろう。

とにかくじっくり調べて行きたい。11月の後半になればこれらの調査に時間がかけられそうだ。

2008年11月11日火曜日

Fairbanks photos

到着すると、北極オオカミがお出迎え。剥製にするとやはり表情は変わっちゃうんだな。

フェアバンクスの街並み。少し黄ばんだ空気があるのは、このまちが暖房器具やその他燃料を使いすぎているからとのこと。

サーモン加工工場。フェアバンクスダウンタウンの南にある。なかでは試食をしながら加工の様子を観察できる。試食に夢中で、加工の様子を見るのを忘れてしまった・・・。

初めてこれを見る人は何を思うだろう。アラスカ大学フェアバンクス校のキャンパス内にある総合博物館で。

オーロラ観測の場所(シャンダラーランチ)オリオン座が北東の方角にではじめた。
星は写真のように空を埋め尽くすほど。流れ星も見上げて30秒もすれば見れた。



シャンダラーランチ牧場のおじいちゃん、おばあちゃんと、フェアバンクスにつれてってくれた僕の友達。ここで食べたムースの肉はおいしかった。

フェアバンクスの北東から南西方向に見た夕焼け。先に見えるのはマッキンリー山。



フェアバンクス郊外の風景。ほんとうに写真のようにピンク色できれいだった。



2008年11月7日金曜日

ありじごく


母親が日記を送ってくれた。僕が書いた、小学四年の頃のもので、中には理解不能の文章もたくさんあったが、その頃の僕の考えが記されていた。1992年6月、ちょうどこの月は、映画「Into The Wild」(2007)の主人公クリストファーが実際にフェアバンクスの大地で孤独で厳しい生活を送っていた月である。その遥か南西で、僕は平和にもありじごくについての日記を書いていた。日記、といっても詩のように短いが、ちょっと面白かったので書き写してみた。

ありじごく

きょう、ありじごくを、見つけました。
そこは、なんと、ぼくの、家の、ガレージの、下にありました。
そして、大っきいのと、小ーさいのと、5つぐらいできていました。
ありじごくのすは、ありがはいってしまうと、すべってでられなくなるようになっています。
でも、ありじごくの小ーさいのは、ありを、入れても、出てしまいます。大っきいのは、入れたら、ありじごくにすわれてしまいます。
すわれるというのは、血かなにかを、すっているとおもいます。
なぜかというと、いつもありを入れたら、はらのふくらんでいるところだけ、すなにうまって、50秒ぐらいで、ありじごくが、「ポンッ」と、ありを、すてます。そのありはもう死んでいます。
そのありはかわいそうだな、と思ったんだけど、ずっと見ているとたのしいです。
もっと大きくなって、ウスバカゲロウという虫になってほしいです。


ま、この文章が小学四年生としてどうなのかは不明だが、なかなかいい観察の仕方をしているなと感じた。今の自分からすれば、もっと深く突っ込んだ内容がほしかった。ともあれ、いちおう論理展開もしてるので良いということにしておこう。また、不思議なことに、この観察をしたことの記憶は、この日記を読むことではっきりと甦ってきた。ありじごくが住み着いたのにも訳があった。三島の実家のガレージはカーポートがあるために梅雨でも雨が注ぐことが無く、芝生の枯れた部分が夏に亜熱帯砂漠と同じ環境になる特殊な部分だ。こういった特殊な乾燥した砂地に住み着くありじごくが、木造建築し始める時代以前の日本にもいたのだろうか。森やちょっとした洞窟のようなところを見つけられるにしても、ウスバカゲロウにとってありじごくとして生活する幼虫期が梅雨と重なってしまっては住みにくいはずだ。

ところで、ありじごくを実際に見たことがある人はいまどれくらいいるんだろう。この昆虫は普通に生活していたら見ることはできない。成虫になって飛べるようになったウスバカゲロウだってそんなに見れるものじゃない。実家に帰った時にはまた見つけて観察してみたいと思う。

秀逸な研究を見つけたので興味のある方は→こちら 小学生でこれだけの研究ができるのか・・・。今の子供はすごいのかも。

2008年11月3日月曜日

投稿特集 第四回:オーロラを見る!+撮影方法


予定が好転して実際に自分がオーロラを見ることとなった。友達が日本から来てくれて僕をフェアバンクスまで連れて行ってくれたのだ。机上の空論述べてる場合じゃないよと言われて・・・(笑)そして、幸運にも一度のトライでオーロラを見ることができた。写真はその時のものである。(ちなみに左下の赤いライトは街灯です)以下撮影情報。10月26日22時03分、天気:快晴、月齢:ほぼ新月、気温:−20℃くらい、方角:北西、シャッタースピード30秒、ISO感度3200、絞り開放。焦点距離:∞、三脚使用、NikonD300を使ったので、思っていたよりも楽に撮ることができた。見たものはそこまで明るいオーロラではなかっただろうが、モニターに写されたオーロラを見た時はとても感動した。たぶん明るいオーロラなら、ISOを下げてもうまく行くだろう。また、ケーブルリリースがあれば、バルブ撮影(シャッターの開閉を手動で行う撮影方法)をもちいてもっと鮮やかに撮ることができると思う。
 他には待機する際は部屋の中をできるだけ暗くしておいた方がいいということ。これも実感できた。明るいところから出てすぐには暗い夜空を見上げてもあまり良く見えない。これは星がどれくらい見えるかで計ることができると思う。明るい部屋から出て15分くらい夜空を見ていると星が見違えるように綺麗に、そしてたくさん見えてくる。実際オーロラが見えたその日は、星も無数に輝いていてとても綺麗だった。
 
 THE AURORA WATCHER'S HANDBOOK -NEIL DAVIS- によるとフィルム選びを誤るとフィルムによっては相反則不軌(露光時間が長くなるにつれて生じる感度の低下)が起こるので注意が必要とのこと。デジタルではこれが起こらないのでデジタルがいい。また、今回のオーロラは小さめだったので、長時間露光で写せたが、揺れるような大きな物の場合はできるだけシャッター速度を落とした方がいいとのこと。著者は最後に気温についてはかなり気を配った方がいいと述べている。オーロラ撮影の後でこの本を見つけて読んだので手遅れだが、外気温が氷点下の場合、暖かい部屋に入ったり出たりを繰り返してはいけないとのこと。これにはかなり反省した。友達のカメラも壊れていないことを祈る。
 いずれにせよ、マニュアル機能付きのコンパクトデジタルを使うのが一番簡単に撮ることができる。友達はGRを使って、楽しんでいた。今回オーロラを見ることができたのも彼らのおかげだし、特集内容も充実したと思う。彼らには本当に感謝。

 次回はカーテンのようなオーロラを見てみたい。