この母親と仔の、毛色の違いは何だろうと考えていた。
ヘラジカの仔は、必ず生後2ヶ月くらいまで薄茶色の毛をしていて、
母親のそれと区別できる。
この仔は、背中の毛がもう生え変わろうとしている。
当たり前だが、2週間前はもっと背が低かった。
このあたりの森を歩いていると、自然に朽ちて折れた木々が目にとまる。
それで僕の中で、ひとつの答えが出た。
その折れた木々は、背が低くて薄茶色をしている。
ふと、遠くにあるこれらの木々を目にすると、
その隣にヘラジカの仔か。でも動いていない。
それでやっと木だとわかる。
生きている木々で、この薄茶色をした背の高い木々はない。
みんな折れたばかりが特に、明るい肌色に近い茶色をしている。
仔の茶色の毛色は、ちゃんと周囲の景色にとけ込む保護色の役割を果たしているのだ。
そういう自然の仕組みなのだと、とりあえず理解しておこうと思う。
真っ黒な服装の僕を、母親と勘違いして一時ついてきた。
ところが母親が意外に無関心なのが、この森のヘラジカの特徴だ。