今日勤務先の会社が提携している写真家の方と食事をする機会に恵まれた。
Y氏の撮影テーマはアラスカとオーストラリアがメインで、日本を拠点としている。
いくつか興味深い話の中でもっとも印象的だったのが、いまでもテントでの生活が自分になじんでいて基本の生活スタイルだということ。ご本人は今年還暦を迎える巨匠クラスの方で、厳しさを内に押さえた物腰の軽い社交性を感じさせる人であった。
オーストラリアでの、一日中太陽と星の入れ替わりを360度視界の開けた広野で見続けたという経験談は印象的。
話は、僕からの空気を読まない、急で本質的な質問から入ったため人生哲学的な内容に。
Y氏「人って一度生活水準を上げると戻れないってのがあるでしょ。僕にはそれが必要ないの。マンションでもベランダでテントはって寝てんだから(笑)」
Y氏「いまでも有名にならなきゃだめだよって周りからいわれるけど、じぶんは富とか名声とかってのに全く興味がないんだよ。僕の師匠の白川義員に師事したために反面教師になってね。彼は非常に名声にこだわった。」
中島「でも名声っていうと大げさですが、そこから広がるチャンスもあるんじゃないですか?」
Y氏「たしかにあるよね。でもアシスタントについてしばらくして、師匠みたいなこんな人生おくるもんじゃないって思ったよ」
(白川師匠について、写真のためならどんなことでもやった、と言ったニュアンスの話があり)
Y氏「それから反面教師になっちゃってね。」
中島「徒弟制度って今ほとんど聞かないですよね。学べることも多いんじゃないですか」
Y氏「全米の国立公園全部まわったのはよかった。アラスカに来てなかったら写真やってなかっただろうし。」
(記憶抜け)
Y氏「お金は必要だね。それはたしか。」
Y氏「いまテレビに出て有名になった戦場カメラマンの渡辺っているでしょ。あれなんかも僕と同じ考えではある」「有名になりたいってんじゃなくて、写真撮りにいきたいための金集めでしょ」
中島「自分でも公言してましたよね」
Y氏「結局そうやって稼いだお金って全部使っちゃうんだよ。撮影で。」
Y氏「俺もかなり稼いでた時期があってね。いま思えばもう少し残しときゃ良かった(笑)昔とは(経済)状況が全く違うからね。大変。昔は営業なんてしなくたって雑誌の仕事なんかもたくさんきたからね」
中島「え?営業してないんですか?(これには驚き)」
Y氏「うん。いまもまったく(笑)」
話題は、死ぬまで写真を追求できる可能性について
中島「以前動物カメラマンの方とお会いして印象に残っていることですが、フリーカメラマンって自分の意志如何によっては死ぬまで続けられますよね。」
Y氏「それはあるね。雇用されているわけではないからね」
Y氏「でも結婚してしばらくすると考え方も状況も変わるよ」
中島「たしかに自分の行動に制限はかかるでしょうね。長期撮影行はできないとか」
Y氏「でも、それにしても70歳にしていい写真たくさん撮ってる人もいるからね。そういうかたちもあると思う。早期定年から本腰入れるとか。ほら、いまは60でも若いっていわれるくらいでしょ?」
(そういえば以前お会いしたカメラマンの方は定年以降になって、持ち株を売りながら行きたい撮影地へ飛び回っている人だった。)
中島「そういうパターンの方意外に多いですよね。」
Y氏「若いうちからずっとやってるとあるところで選択しなければならないところが出てくるよ」
中島「選択!?とは?」
Y氏「自分の写真、やめるかやめないか」
ここで会話は仕事の話題へ移行し写真トークは終了。終始冗談混じりで楽しく食事をさせていただいた。
知識ではない実地で学べる知恵とプロの思考については師匠につかないと得られない。そんな教えを自分は求めている!などということはいえなかった。が、これに関しては継続的にいい機会に恵まれそうだという感覚も得た食事会だった。
2010年12月24日金曜日
2010年4月26日月曜日
Bubble Net Feeding

Bubble Net Feeding (上図)とは、南東アラスカに住むザトウクジラに特有の採餌方法である。そのユニークさは Social Foraging (集団採餌)にある。
簡単に説明すると、みんなで泡で魚を囲ってみんなで一斉に食べる、賢い方法。南東アラスカ以外の地域だと、これを下のイラストのように、一頭で行い、バブルを使うことも珍しいそうだ。

しかし、何らかの理由(未だ解明されていない)で、この南東アラスカの地域に住むザトウクジラは、集団採餌をする。僕は単純に、夏場の南東アラスカには、かれらの主食となっているオキアミよりも、ニシンが多く、群れをなして回遊しているため、それらを捕るために効率よく産み出された方法なのだと考えている。一日に1.5トンもの食料を必要としているのだから、オキアミをせこせこかき集めるよりも、一度に多くのカロリーが取れるニシンを採ろうと考えるのが普通だ。あまり話を膨らませすぎない方がいいのだが、いずれこの南東アラスカのクジラたち、正確に言えば、このバブルネットフィーディングを行う個体群は、オキアミを採るためのひげを失い、亜種へと進化していくと想像している。(そんな頃に僕らは生きてはいないけれど)
上図解説:surface 海面、 bottom 海底、 prey 獲物、 bubble net、気泡ネットニシンを追い込む役割のクジラが、その採餌行動のときにしか発しない独特の声を出し、ニシンを追いつめていく。ニシンは声のしない方へと誘導される。気泡ネットを出す役の個体がニシンを泡で囲む。
動画はこちらから→バブルネットフィーディング
2010年4月23日金曜日
大判出力
初めて写真の大判出力を行った。
内容は以下の通り。
発注先:東京リスマチック九段下
プリントA1×2、A2×4計6枚
印刷用紙:半光沢紙
表面加工:ラミネート加工
仕上げ:木製パネル
合計44000円
4月のキャンペーン中で、印刷代が60%オフだったものの、大判での作品仕上げのコストが高く付くことを身をもって体験した。
また、Nikon D300 でのISO1600ではA2に引き延ばしただけでモアレが強く出ることがわかった。天候がくもりの状況下で、早く動くものを取る場合の措置として、ストロボが必要になってくる。
7月のザトウクジラの撮影地である南東アラスカは、ほとんど晴れのない気候。クジラに対してストロボを購入する必要があるのだろうか。
2009年11月26日木曜日
2009年10月24日土曜日
クラスノート
今日の授業にナショナルジオグラフィックでエディターとして働いていた、Clark James Mishler がゲストで招かれた。理由はこのクラスの教師であるマイケルが彼のもとで数年働いたことがあることからだった。現在はアンカレッジを拠点としてフォトグラファーとして活動を続けている。
授業が始まるなり、ものすごいテンポで話しだした。しかし滑舌はクリアだ。
「このなかでフォトグラファーとして働きたい人は何人?」
「だとしたら何をするの?」
「わたしはコマーシャルフォトグラファーで、お金のためにやってる。それが第一。」
「ちなみにあなた方は何歳?20ならいいけど、22、3なら今もっているやりたいことを半分に自分で絞りなさい。」
「28をすぎたなら、それをさらにまた半分に絞るべきです。」
「人生は短く、選択の連続です。」
「では、写真の話しを始めましょう。」
イントロで脳が研ぎすまされる感覚だった。授業全体を通してみて、「写真を見る目を養うための基礎講座」と題するとわかりやすい。
何がいい写真で、そのどこがよりよい写真なのか、ということは誰にとっても漠然としているのが普通だ。ただ、どちらが良いということだけがわかる。その「なぜか」を簡単な定義付けをすることで、よりクリアにしていく。その定義のいくつかを彼が教えてくれた。
1. Diagonal Line(斜線) 2. Pattern (パターン) 3. Back Light(逆光) 4. Crop(トリミング) 5. Tilt(傾けること) 6. Flame(フレーミング) 7. Silhouette(シルエット) 8. Motion (動体) 9. Contrast (対比) 10. Scale(スケール) 11. Angle of View(カメラアングル) 12. Rule of Third (黄金律) 13. Selective Focus(フォーカスの選択) 14. Color(色使い)15. Negative Space(余白)
などなど、ほかにもいくつか言っていたが聞き逃した。しかし、なかでも1、3、9、と11の4つが重要で、他写真家との差別化を図るためのキーエレメントであると言っていた。
たとえば、左の写真は彼の写真だが、上記の要素のうちどれが当てはまるだろうか。
答えは、1、2、3、11、14。
メイン構図として1の Diagonal Line をもってきている。
ほかに、基礎をすべて意識できるレベルをクリアした後の、意識すると良いポイントを一つの基準にまとめて教えてくれた。それはFABRICという一つの単語に集約できる。Foreground and Background Repetition Interactive Contrast (前景と背景のコントラストの関係性を繰り返すこと。)
たとえば、左の写真(同じく彼の撮ったもの)では、写真中の右側背景は暗く落としてある。つぎに、女性の顔半分右側に光を当てて明るくしてあり、顔の左側はやや暗い。そのさらに左側の背景スペースは壁に光を当てている。このように、左から、明暗明暗の順で構図を整えている。この前景と背景とのコントラストの繰り返しがいい写真になる基準として、かれはポートレート写真を撮り続けている。それにしてもファブリック(編み物、合成物)とはよく言ったものだ。
なにを良い写真として見るべきなのかが漠然としていたなか、この授業によって一つの解決の道を見いだすことができた。いままでやっていた自分の写真観察トレーニングとして、写真がどのように撮られたのかを分析する、過程の分析に加えて、その写真のどこが人に感動を与える要素となっているか、あるいは出版されうるものに仕上がっているのかを考える、効果の分析の必要性を強く感じた。これからのトレーニングにこれを含めてすすめていこうと思う。
2008年12月19日金曜日
18mm

レンズを買った。
シグマの 18mm~50mm (デジタル換算)の中古。これはとりあえず広角を持っておこうと思って買ったもの。
値段はなんと日本円にして2000円ちょっと。レンズはなるべく高いものの方が後々いいのは知っているが、二千円でなら試してみるのも悪くないと思った。
今までは、24mm がいちばんのワイドだったので初めての画角を試すことになる。
買って早速デジタルカメラに取り付けて撮影。ずっと 18mm で固定して撮り続けた。帰って画像の詳細をチェックしてみると、鮮明とは言えない。
しかし、この安さを、画像の鈍さを逆手にとって、さらに画像を荒くするため、ISO感度を高めて撮ることでモノクロにおいてはいい雰囲気が出せる。たぶんプリントするわけにはいかないと思うけれど、少なくともモニターでは楽しめるし、いい練習ができそうだ。
自動ピント合わせに時間がかかり、画像も不鮮明となれば被写体は限られるし、クローズアップも期待できないだろう。なかなか難しいが、風景用とモノクロ用として使ってみようと思う。
2008年12月1日月曜日
Information retrieval
情報収集サイト
自然写真を撮るうえで、とても貴重な情報を提供してくれているサイトがあるのでここで載せておく。まだ自分の中で体系が出来上がっていなく、あいまいだが、撮影に出かける際は地理情報やその日のコンディションを下記のサイトから得るようにして、極力無駄足を運ばないよう気をつけている。他にも撮影テクニックやイメージのアイデアなどが得られるサイトもあるのでかなり活用している。日本で見ていたサイトに比べて実践的だと思う。英語なので文章の理解に苦しむものの、やはりこちらのサイトは強力だと認めざるを得ない。
一番活用しているサイト
写真撮影、特にテクニックに関するサイト
きれいな写真を見ることができる。
・おなじみ。作られた写真が多いそうだが参考になるものばかり。
自然写真のロケーション情報をPHDファイルで提供
国立公園で撮影するときのための情報
アウトドア知識の貯蔵庫
天気予報
写真に関する本を検索できるサイト
写真のビジネスに関する情報
すべてがネイチャーフォトに特化したサイトではないが、かなりの詳細情報を得ることができる。リストを設けて自分の撮影行を体系立てていきたい。
2008年5月6日火曜日
The World Heritage Committee
先日アンコールワットの写真を編集していて、ふと世界遺産についての疑問が生じた。世界遺産への登録という意味では現在僕は富士山が世界遺産に登録されることを望んで応援しているということもあって、どのような仕組みで、ある国の物件が世界遺産に登録されてきたのかを心得ていたつもりだった。
世界遺産のなかの文化遺産登録について簡単に経緯を説明しておく。まずその物件を持っている国が、自国内部で検討する。次に、NGO団体であるIUCNに推薦状を提出する。IUCNにて事前調査(ビュロー会議)がなされ、ここをスルーしたらようやく国連機関であるUNESCOにおいて世界遺産会議(The World Heritage Committee)が開かれる。京都会議では日本もこの議長国として出席したりしている。ここでの会議で採択された物件のみが「UNESCO世界遺産」とされる。
では何に疑問が生じたかということを述べておくと、この登録基準に疑問を抱いた。世界文化遺産50選などの出版物を眺めてみると圧倒的に石造建築物が多い。僕の持っている雑誌にはロシアのキジ島の木造教会以外はすべて石造建築物だった。登録基準が欧米の価値観に偏っているようにしか感じなかった。木造は残っているものが少ないんだし、世界的に石造での文明が多くを占めるのだから当たり前だというかもしれないが、その考え方こそUNESCOの定めている定義に反する。数量の問題ではない。むしろ朽ちやすいものならより一層保護していく必要がある。
後日よく調べてみた結果、やはり欧米偏重の価値基準で採択されていたようだった。そもそも日本など木造建築が文化財の多くを占める国が、UNESCOへの加入が遅い。日本は1992年である。以後、京都、古都奈良の文化財が遅れて登録されることになり、先に述べた京都会議などにおいて、日本は木造建築の文化価値的な重要性を訴えるとともに、その偏見を打破しつつある。こういった活動は非常に重要だと思う。日本の加入が遅れた原因については、自国内で一定の文化財保護基準が既に固まっていたことと、当時世界文化についての関心が低かったことなどがあると言われている。最近では米国とともに、世界遺産基金への拠出も締約国ではトップを占める。
話しをアンコールワットに戻すと、その貢献は顕著だと思う。アンコール遺跡群については上智大学学長の石澤良昭氏をはじめ、研究、修復などほとんど日本がやっていると言える。石澤氏は去年、現地住民へ自国の歴史を知ってもらうことと、観光客の見聞のために遺跡群の近くにシハヌーク博物館を開館させた。この博物館設立は、自国の歴史をより深く知る必要があるという石澤氏のカンボジアの子供たちへの意思に寄るところが強いと思う。
この石澤氏の例のように、世界にあるすべての遺産が平等に保護され、全人類のために維持されるべき、という視点が重要なのだろう。これこそUNESCOが持つ世界遺産の定義であり、締約国がおのおの自国の遺産を主張するのが世界遺産会議の目的ではない。もちろん上述した京都会議における日本の主張も、日本国京都あるいは奈良の木造建築を例に出すにとどめ、「木造建築一般」の主張をするという節度が大切。今後そういった視点に立って富士山の登録についても考えてみたい。
とまあ、写真の勉強をしているとついつい横道にそれる。でもこれもまた被写体を知るという意味においては重要か。
※ハイパーリンク先には英文ページを多く持ってきているが、なかの写真を見ればそれがどんなものかわかるようなページを優先している。
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