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2013年10月18日金曜日

国際オオカミ会議


 オオカミが日本にいないために、日本では記事にもされないことかもしれない。日本は自国にないもので、関わりが今までほとんどない場合、そのことには関心を示さないという国柄で、他の国に比べてこの特性は特に強いと思う。

Duluth, Minnesota


2013年10月10日から4日間、ミネソタ州ダラスで国際オオカミ会議が開かれた。
僕は最後の一日だけ参加をした。

 オオカミがいまでも日本にいたなら、その日本のオオカミ研究者も日本と海外に当然いるわけで、この動物は間違いなく日本の生態系に重要な役割を果たし続けていたことだろう。もしそうであったなら、今回の国際オオカミ会議で、日本の研究者や組織団体が参加し、もっと日本でも盛り上がったことと思う。ぼくはこの現状を、過ぎ去ったこととして捉えてはいない。


 今回の国際オオカミ会議で、専門家たちが特に注目していたのは、ヨーロッパのオオカミ事情についてだったように思う。そのほか、参加者はやはり米国の方それも中西部から来ている人たちが多かったためか、アイルロイヤル島のオオカミと、ミネソタとウィスコンシンのオオカミをテーマにしたプレゼンに、人々は多く集まっていた。

    最後のIUCNのオオカミ専門家たちの会議を傍聴したが、メキシコでのオオカミ再導入問題よりも、ヨーロッパでのオオカミ管理についての方策を練ることの方が、委員たちの関心を示していたということは、僕にとっては意外だった。これにはもちろん様々な見方がある。メキシコは隣国で、IUCNの方針さえ定まっていれば、具体的にアメリカとメキシコだけで話し合っていけばよいわけで、比較的そういった時間は他で取れる。しかし、今回ほどの大きな国際会議は4年に一度も開かれないので、ヨーロッパの専門家たちと、アメリカ、メキシコを含めた直接の話し合いでは、どうしてもヨーロッパの問題に偏ってしまうのも無理はないかもしれない。

 しかし、ひとつの絶滅した種を補うために、ふたたび近い種を生態系に導入するというテーマよりも、隣り合う国同士がオオカミをどのように、統一した意志を持って管理していくか、というテーマの方が重要視されていたという事実を鑑みると、IUCNという大きな組織自体が、まだ未熟な機関であるというイメージが強かった。

 いずれにせよ、今回の参加は僕にとって非常に有意義だった。オオカミ研究の最高権力者であるデビッド・メッチとルイージ・ボイターニも間近で話を聞くことができた。直接話がしたかったが、実際に彼らの様子と話を聞いていて、僕が話をできる状況にないことはすぐにわかった。かれら研究者を見ることで、オオカミの現状が少しつかめるというのは、すごいことだと思う。今回の参加で、世界のオオカミ事情が漠然と把握することができた。この感覚は、次回プリンスウェールズ島でレイモンドと話をするときにも、必ず持っていなければならない感覚である。










2013年3月5日火曜日

夏の計画について - Chase the woleves Part 8 -


久しぶりの投稿になる。
先月は、ブログの記事を書く暇もないほど忙しく動き回っていた。
冬のオーロラツアーシーズンを早い段階で切り上げ、今月から夏の準備に取りかかる。

今季は、前年度からお金を貯めて計画を少しずつ進めていた、ウェールズ島での撮影へ入る。おそらく、僕の見たい生態のシーンを写真で収めるには、3週間は必要になるだろう。

この広大な雨林帯の島は、カナダの東海岸沿いにある南東アラスカといわれる地域にある。瀬戸内海を思わせるインサイドバッセージ(内海の通路)にあり、穏やかな海流がとおる島内は、とてもシンプルな生態で成り立っている。

まず、植物はアラスカ檜がほとんどを占め、古い森には栂(ツガ)の木がまばらに生える。地面はコケに覆われた、太古の時代を思わせる風景だ。数本の川には毎年サケが遡上してくるところがあり、上流の湖に近いところでは、ビーバーが棲息する。夏の間、この島の内陸に行けば、低地を嫌うようにしてシトカオグロジカが丘の上で草を食む。天敵からすぐに逃げられるため、見通しのきく高台が生活の拠点となるのだ。そしてこの天敵というのが、今回の撮影行で必ず見たいアレキサンダー諸島のオオカミである。この比較的小柄なオオカミが、オグロジカに支えられて250頭ほど、この四国の半分くらいの島に生息しているのである。この個体群はタイリクオオカミから分岐した亜種のオオカミ(Canis lupus ligoni)である。

2011年10月14日金曜日

アイルロイヤル島へのアプローチ(メモ)

島に棲むオオカミということで特異的な個体群が、米国ミシガン州の五大湖に浮かぶ島、アイルロイヤル島というところに生息している。島の大きさは佐渡島より少し小さい程度。島嶼地域は環境資源が限られており、大陸に比べて脆弱な生態系をもっている。ここの生態は日本では話題にならないためあまり知られていないが、18種の哺乳類が棲んでいるとされているもののクマのいない島で、オオカミとムースが食う食われるの関係にあるとてもシンプルな生態系で有名である。

(アイルロイヤル島について 日本語ページ)

アイルロイヤル島の位置


アイルロイヤル島国立公園


国立公園は4月16日から11月1日まで開いており、冬はオオカミをメインとして動植物を保護する理由と、この島の気候の厳しさのため閉鎖される。ビジターセンターは島の西側のウィンディゴセンターとロックハーバーセンターがある。他に、島に入る前のミシガン側本土にホートンビジターセンターもある。それぞれ時期によって営業時間が異なるので注意が必要。9月半ばにはほとんどが閉鎖。冬の間は管理オフィスがホートンで開いており、訪れることができる。
(ビジターセンター詳細ページ)

入園料:
アイルロイヤル島国立公園へ入園する場合、入園料として一日$4を支払う必要がある。
(入園料について)

島への入り方:
まずは主要な港までは車かバスを使ってたどり着く必要がある。ミシガン側であれば、ホートンという港町。ミネソタ側であればグランドポーテージ。港からはそれぞれ船や飛行機がでているが、スケジュール的に複雑なので、島へ上陸する場合は緻密に計画を立てる必要がありそうでだ。

ミネソタ側からのアプローチ

ボヤージャーⅡ(ボート)
この船はミネソタのグランドポーテージという岬から出ている。
5月7日から10月2日まで金曜日以外運行している。シーズン中でも時期によって時間と寄港する場所が違うので注意。

ミシガン側からのアプローチ

レンジャーⅢ(ボート)
この船は国立公園局が運営する。ミシガンのホートンという川辺から運行している。
5月31日から10月11日までで3〜4日に一便がシーズン中運航している。岬からロイヤル島までは5時間。

アイルロイヤルライン(ボート)
この船はカッパーミシガンという岬から定期便が運行している。込み具合により運行する曜日が異なるので注意が必要。シカゴから車で8時間強。岬からロイヤル島までは2時間。
ピークシーズンである7月15日から8月15日までは大人往復$130
以降9月30日までは$114
車で行く場合、岬に一日$5で駐車しておくことができる。
(2011年現在)

ロイヤルエアー(フライト)
飛行機もシーズン中は利用可能。この航空会社はミシガンのホートンにあり、毎年5月中旬〜9月中旬まで運行している。
予約が必須。ロイヤル島までは往復一人$290

2011年8月17日水曜日

Chase the wolves -part 7-

去年よりまた少し近づいた。今年はもう少しいけそうな気がする。

デナリ国立公園で撮影できたオオカミとしては、いちばん近い。

しかし、ただ近くで撮影できても仕方ないばかりか、「偶然に撮れた」というのではなかなか撮りたいものは撮れないというのが現実だ・・・。

Grey wolf

2010年6月28日月曜日

Chase the wolves -part 6-

今年夏、アラスカ到着後のはじめの撮影はデナリ国立公園でのオオカミ撮影。
(今回の投稿では前回からの対策と結果のみ表記)


 去年の問題点における改善点は以下の通り。

問題1、滞在期間、観察時間が短かったということ。
改善1、滞在期間1週間のうち行動時間の大半をオオカミ捜索に費やしたこと。

問題2、Adams 氏のアドバイスをもとに撮影場所を設定したこと。
改善2、書物、時季、現地情報を得て考察の後、自ら捜索する場所を設定したこと。(これについての詳細は part 5 参照)

問題3、滞在期間気温が高く、オオカミの行動は抑えられていたこと。
改善3、去年より2週早めて出かけたこと。朝と夕刻に集中して捜索したこと。

問題4、オオカミの巣がある位置はエリア閉鎖されて入れなかったこと。
改善4、唯一閉鎖エリアを通過できる、パークバスで何度もオオカミの巣付近を行き来したこと。

結果として、成獣3頭と幼獣2頭を確認できた。(写真は大人2頭のものと子供1頭のもの)



このEast Fork pack (オオカミの群)は今年6頭の子供が生まれて育てているという。

6月末で、このサイズ(生後2週未満)ということは6月初旬から中旬にかけて出産されてことになるが、ミューリーやほかの研究者からの報告をもとに一般にいわれている出産時期からはかなり遅れている。


動物写真というよりは記録写真にすぎないが、今回の発見と捜索の繰り返しによって、徐々にオオカミの生活が自分の中でイメージできるようになりつつあるのは確かだ。また、自分の撮りたいと考えているオオカミの姿を映すにはほど遠いことも確かである。


2009年7月12日日曜日

Chase the wolves -part 5-


 オオカミの撮影を構想し始めて1年半、実際に撮影しにいく計画を実践できた。今回の場所はデナリ国立公園。結果、失敗に終わったが、なぜ見つけることができなかったのか考察する必要がある。

 その考察を今回のデナリ撮影行のみに焦点を当ててみることにする。撮影前の情報として、オオカミの行動パターンを The Wolves of Denali をもとに研究した。現地に行く前日に Layne G. Adams に会い、デナリ国立公園のオオカミ生態についてインタビューした。彼は先述の The Wolves of Denali の著者 David L. Mech とともに研究し、現在 USGS Alaska Science Center で調査研究を行っている生物学者である。また、現地に到着後、レンジャーにオオカミ捜索の方法とオオカミの巣(Wolves' Den)がある場所を尋ねた。
 そして、撮影に臨む際、 Adams 氏から聞いた、オオカミを見かける可能性が高い場所(Storny Dome, Polychrome Pass, East Fork & Toklat River area)に焦点を定め、そこへ入るための許可証をとり、以上の箇所に2泊3日ずつ、3回にわたり計6泊9日の撮影行を試みた。

 以上、大きく3つ。事前知識の習得、学者からのアドバイス、レンジャーからの情報をもとに撮影に臨んだことになる。しかし、撮影できるような状況に自分を置くことはできなかった。
 1つめの自分でのオオカミ勉強の目的は、撮影の際の描写以外に、学者やレンジャーから貴重な情報を引き出すために自分でもオオカミに対する知識をつけておくことだった。 
 では2つめの学者からの情報。今考えてみると、これには利点と欠点がはっきりと考えられる。利点は撮影のためのオオカミの生態情報を得ることができたこと。
 Adams 氏によれば、この時期オオカミは群れ一丸となり、子育てに専念しているということ。ジリスも冬眠しておらず、エサとしては豊富にあること。(群れで大きな動物、ヒツジやシカなどを狩ることはこの時期、非常に珍しいとのこと。ほとんどないと言っていた。)他に、外気温が高く、体力を奪われるため、巣からの行動範囲は限られることなどの話しをしてくれた。これらことから、オオカミの巣の位置がどこにあるのかを突き止めることが非常に重要であったことは理解していた。(ちなみに正確な巣の位置を示すGPS情報はもちろん教えてくれない。)
 欠点は、彼ら生物学者はオオカミを捜索する際、ラジオカラー(電波を発信する研究用の首輪)をもとに、上空からそれをつけたオオカミを見つける。そのため、学者はオオカミを「見つけること」に時間をかけてきた訳ではないということ。 
 3つめのレンジャーからの情報。これは遭遇の可能性を高めてくれていたに違いない。オオカミを捜索する場合、川沿いに注目すべきだということを教えてくれた。どの状態でどちらに向かって歩いているか知ることで、巣の位置がだいたいわかるということ(エサをくわえて向かっている方向はだいたい巣のある方角であるなど)。実は園内で立ち入り禁止されている場所は、オオカミの巣のある場所であるということ。(これは人が危険だからではなく、オオカミの個体数を維持するために保護の目的で閉鎖している。)

 
 オオカミを撮影できなかった理由として考えられることは、

1、滞在期間、観察時間が短かったということ。
2、Adams 氏のアドバイスをもとに撮影場所を設定したこと。
3、滞在期間気温が高く、オオカミの行動は抑えられていたこと。
4、オオカミの巣がある位置はエリア閉鎖されて入れなかったこと。 

 などがあげられると思う。


今年、もう一度トライする機会を作る。


2009年5月2日土曜日

Chase the wolves -part 4-



来月6月半ばから、本格的にオオカミを追跡する時間を設けた。場所はデナリ(Denali)国立公園。上の地図でわかるように、場所はアラスカの真ん中に位置している。
オオカミとの遭遇の可能性を高めるために、事前の準備が欠かせない。撮影のための資料としては古いが、オオカミの群れ(以下、パック)の動態を知る上ですごく参考になるのが生物学者のまとめた文献である。オオカミ研究の権威デビッドメッチの資料によると、デナリ周辺には20年ほど前から15ほどのパックが確認されている。その中でも比較的定住傾向にある群れが2パック、 East Fork(EF)と Headquoters(HQ)と名付けられているパック。

EFパックはアドルフミューリーが世界で初めてオオカミ研究をしたときの対象となったパックだ。彼の研究は1940年、下の図でメッチの研究は1990年前後。少なくとも50年以上群れのテリトリーが固定している。



テリトリーの大きさはリーダーの強さやパック内の個体数によって変化があるそうだが、この図からすべての年のテリトリーが重なっている核のようなエリアを見ることができる。僕の考えでは撮影の可能性を高めるのはこのエリア。あるいは、詳細情報が得られれば、テリトリーのエッジの部分も可能性は高いと考えている。なぜなら、テリトリーのエッジはパック内のオスたちが縄張り確保のためマーキングとパトロールをする場所であり、頻繁に通るからである。

 East Fork パックを選んだもう一つの理由は、先程述べた核となるエリアへ車でアプローチできるからである。そこで、デナリの地図とEFパックのテリトリーをフォトショップで重ねてみた。

核のエリアを灰色の線が通っているが、ここが道路。そこから、Toklat River を北上していくとEast Fork の川にたどり着く。
まず、このエリアへ入ることになるだろう。

それからもう一つが  HeadQuoters のパック。

このパックも比較的定住傾向にあると考えられる。テリトリーと地図を重ねてみると、

 サベージリバーキャンプ場に、核のエリアが重なる。このキャンプ場をベースとしてサベージリバー南下の撮影行を繰り返すと良さそうだ。

バックカントリーで国立公園へ入るのが初めてなので、川がとても重要になるだろう。これに沿って歩きさえすれば、道に迷うことがないからだ。


しかし、なによりも最新のオオカミ動態の情報が必須である。これら二つの定住傾向にあるパックについての研究とウェブでの情報収集を並行して進めて、現地到着前にフェアバンクスのADF&Gへ再び行く必要がありそうだ。





2008年11月17日月曜日

Chase the wolf -part 3-

フェアバンクスへ行った時にアラスカ州魚類狩猟局(ADF&G)に行くことができた。運良くオオカミの研究を以前やっていた学者に会うことができた。ロニィーボーティーという生物学者で、今はオオカミ研究を終えて、引き続きそれと関連性のあるムースの生態を研究している。彼の部屋にはこれから使用する新しいムースのラジオカラー(生態調査のために個体につける首輪。無線でキャッチできるようになっている)が3つ床においてあった。オオカミの物と比べるとかなり大きかった。失礼ながら挨拶みたいな話はすぐに済ませて、率直にオオカミを見つけたいんだけれどもどこで一番見つけられるのか。アンカレッジの近くで見つけることは可能か。といった内容を質問した。研究者にとってつまらない質問ではあるけれど、丁寧に答えてくれた。

「デナリに行かないと、写真で撮るのはほぼ不可能だよ」
「オオカミは君が近づくずっと前から君の存在に気づいていて、避けようとするから」

「足で近づくということはやっぱり難しいですよね。」
「そうだね」

「デナリでは冬でも見ることができますか?」
「たぶん。雪をバックに撮るのはいいかもね。」

「一番いいアプローチ方法は何ですか?」
「僕ら研究者がやっているように飛行機で無線を使って追うという確実な方法があるけど・・・。」

「むずかしいですね(笑)」

「最後にすみません。デビッドメッチさんは今でもここへ頻繁に訪れるのですか?」
「頻繁ではないけど、くるよ。いつ来るかは僕にはわからないなあ。いまは僕はオオカミに直接関わってないからね。」

「あなたの研究書類をなにかもらうことはできますか?」
「古いやつだけど、これ。」

「ありがとうございました。」

彼の学会で発表した資料をもらって部屋を出た。なぜ研究対象を変えたのか尋ねたが、ムースの個体数の方が今は重要だと言うことしか聞き取れなかった。もっとたくさん話してたはずだけど。もっと英語に慣れなくては、詳細情報が得られない・・・。

(ちなみに会話の中のデビッドメッチとはミネソタ大学のオオカミ博士のことである。オオカミといえば Mech という印象が僕の中にはある。)

彼がくれた資料を早速読んでみた。カナダの学会用のものは『ムースの個体群動態に伴うオオカミの繁殖率の変化について(1992)』。ワイルドライフジャーナルに寄稿されたものは『オオカミコントロールによる有蹄類の増加について(1996)』オオカミコントロールをうまく訳せないけれど、この魚類狩猟局と連邦政府がオオカミの数が増えすぎないように個体数を管理している。増えすぎた場合は狩猟制限を緩めたり、屠殺したりして調整している。そのことである。有蹄類とは、蹄(ひづめ)のある哺乳類、ムース、カリブー、エルク、などなど。研究対象を変えたとはいえ、彼は食物連鎖の一点を研究しているに変わりはなかった。焦点をオオカミからムースに変えたことで何がわかったのだろう。

とにかくじっくり調べて行きたい。11月の後半になればこれらの調査に時間がかけられそうだ。

2008年9月28日日曜日

Alaska ZOO


きょうは予定を変更してアラスカ動物園へ。
やはり興味を引かれたのはオオカミ。二時間くらいだろうか、彼らの動きを観察していた。観察と言ってもただ好きで見ていただけで何か目的を持った事はしなかった。
柵の中には4頭が確認できた。オスとメスとの区別はできなかった。長い間見ていると気づくもので、ここにはワイルドライフは無いなとわかった。中にいるのはオオカミという飼い犬たち。その4頭を見ていても順位の違いが見えない。僕は野生のオオカミの群れを見た事が無いので確かな事は言えないが、勘でわかる。本で読んだ順位制のあるオオカミの行動でも、DVDで見たじゃれ合いの仕方でもどちらでも無い。たぶん、飼育員がオオカミ社会で言うアルファ個体(順位制の中のトップ個体のこと)になっているんだろうと推測した。動物園で本当の野生を演出する事はやはり不可能なのだろうか。(本当の野生を演出する、という言葉自体おかしいけれど)各動物種の一部の行動は再現できるだろうが、全容までは中型以上のほ乳類において不可能なのかもしれない。ある程度の、とは言ってもかなりの広範囲を要するが、広い土地があれば、それは可能なのだろうか。また、何もせずに生きていける環境では緩い表情しか生まれない。嫌いではないが、これを撮り続けることは自分にとってあまり意味が無い。と、あれこれ考えながら、でも時間はあっという間に過ぎてしまった。やっぱり自分は犬系は好きだなと振り返った。

2008年8月23日土曜日

chase the wolves -part 2-

 以前の投稿、3月の chase the wolves の題で、どのオオカミ群に照準を当てて撮影に挑もうか考えていた。この時はunit 16 と unit 13という二つの群れについて研究を進めようと書いていたが、現地アラスカに来て調べてみたところ、やはりより詳しい情報を得る事ができた。unit 14 という群れが近年頭数を増やしていて個体数管理もしっかりできているという。この情報はアラスカ州魚類狩猟局(Alaska Department of Fish and Game)が直接一般に公開するレポートから得る事ができた。unit 14 の中にも A, B, C と分かれており、特に unit 14C はこの管理局も力を入れていて、一般の人がハイキングをしていて時々オオカミを目にできる程度まで個体数を増やす事を目的としているため、撮影するには一番適しているのではないかと考えられる。アンカレッジの北の隣町イーグルリバーはこのユニットの完全にテリトリー内に収まっている。イーグルリバーまでは便数は少ないものの、ただ乗りバス(学生は無料)で行く事ができるので通う事ができる。これらの情報源であるレポートはリサーチ内容から詳細に欠ける感じがする。3年ごとのレポートなので所々端折ってあるのだろう。2008年版はまだおいていないので2005年の情報であるのも気にかかるところ。アラスカの気温もここ最近で急な変化をしているし、これが生態系に影響を与えないはずはない。 →アラスカ近年の気温変化による生態系への影響
以上の点からとりあえず、情報をもう少し、特に一次情報を得てから観察しに出かけようと思う。
いまのところオオカミだけに限らず、撮影に関する情報は大学内の図書館から収集している。以前よく通っていた日大の図書館もかなりの大きさを誇っていたが、ここは優に、その3倍はある。本当に出られなくなり焦ったほどだ。この中の一つのブースにアラスカコレクションというコーナーがあり、そこに、今までどこの図書館でも目にした事のないワイルドライフについての本と、研究者による無数のレポートが所蔵されている。貸し出しが許可されていないので、館内で調べを進めることになる。23時まで開館しているところはさすがだと思う。

*The copyright of this photograph carried here belongs to ADF&G.

2008年3月3日月曜日

chase the wolves


オオカミを撮影する構想について。
ロケーションは特定してあり、アラスカ南部。現段階では特にアンカレッジに近い2グループに特定して調べを進めようと考えている。ADF&G(アラスカ州魚類狩猟局)の研究コードで言う unit 16B と unit 13 の2パックである。これら2グループは彼らのテリトリーが人間の生活圏と非常に接近しており、ADF&G により個体数がおおむね管理され、調査が比較的行き届いているといえる。このような条件から、生態撮影のド素人である僕にとっても撮影できる可能性が大きくなる。 ※注:右のイメージは狼のテリトリー表示ではない。

実際 research から shot までの僕の考える過程。その過程を大まかにまとめると以下のような手順になる。

1.study & analysis 
アラスカ州各局の方から調査情報を得る。文献を読んで生態を詳しく研究する。など
2.field research 
生態調査のための器具を用いて、実際の個体群調査。出現数カウント(無人赤外線)。
3.approach
出現頻度の高い場所を特定して、無人撮影器具を設置。
4.   shot
できれば無人撮影はしたくないが、はじめは仕方ないと思う・・・。

wolves


オオカミについて興味を持ち始めたのはいつ頃だろうか。
幼少の頃から動物、とくに哺乳類が好きでそのまま動物学科の大学に入り、その図書館で見つけたエリックツィーメンという学者が書いた「オオカミ その行動と生態」を読んだときだったかもしれない。今ではその内容をほとんど覚えていないのでまた読みたい。

今回オオカミというテーマで書き始めたのは、これから自分が写真を撮っていく際に、必ず生態写真として収めたい動物がオオカミだからである。このオオカミという動物、調べれば調べるほど人間と関係が深く、似通った社会生活をしていると感じる。オオカミが牧畜を襲うため、昔からオオカミは広い範囲で人間から迫害されてきたが、オオカミが広いニッチ(生息地域)を必要とすることや、人間よりもハンティングがうまい事なども原因かもしれない。これらの人間と競合してしまう生態から、人間はオオカミを「邪魔な動物」と決めつけた。そして世界各地で絶滅に追いやった。日本においても、である。しかし今なお、オオカミは「怖い」「悪い」「暗い」というイメージが根強く残っているのではないかと、文献を読んでいると思うことが多い。

オオカミについての歴史的記述はまた後日述べるとして、この動物の撮影について考えていきたい。野生のオオカミを撮影しようと思って、100%撮影できるカメラマンを僕は一人しか知らない。今まで数多くのネイチャーフォトグラファーを調べてきたつもりだが・・・。それほどこのオオカミという動物は撮影が困難なのである。ただし、僕は俄然やる気が出る。撮影が困難な第一の原因は彼らの嗅覚だといわれる。クマでさえ人間との距離が数キロ離れていても、その臭いを感じ取る事ができるのに、オオカミはそのまた数倍嗅覚がいい。その嗅覚によりオオカミたちは自分たちのテリトリーに侵入してきたカメラマンの臭いを時間差をおいて嗅ぎ取る。あたかも人間がTVやインターネットから情報を得るように、オオカミは侵入者の臭いによって、時間、距離、種類などほとんどすべての情報を得るという。彼らのフィールドにおいて生身の人間では敵うはずがない。上述したが、撮影を100%成功させるオオカミ撮影のスペシャリストがいる。ミネソタ州在住のジム・ブランデンバーグだ。(彼のバイオグラフィーはまた別の機会に設ける。)彼はなんと、オオカミのテリトリー内に自宅がある。普通はそんなところに自宅を構えるとオオカミは避けるようになるだろう。しかし、彼はまず先に彼自身をオオカミに認めさせてしまった。これはオオカミのリーダーになったヴェルナーフロイントの話しとは違う。ジムは「部外者」として慣れさせてしまった。こうしてそこに棲むオオカミはジムを気にしなくなった。彼の著作「brother wolf」(上:表紙写真)を読めば、中の写真から、部外者として節度と敬意をもってオオカミの群れと対峙している様子が見て取れる。
僕は正直これを真似しようなどとは思わない。できるとは思うが、いざ撮影というころに自分が老いていては元も子もない。それほど時間とお金がかかるという事だ。ではどのようにオオカミにアプローチをするのか。構想は既に決まっているが、それを次の投稿で考える。


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