フリップ・トッドは現在、アラスカ州でいちばん多くの仕事を手がける出版社の代表をしている。先日、たまたま彼が僕の写真を土産屋で見つけて、連絡をくれた。
写真集を作らないか、という誘いだった。
会う約束をメールでして、彼のオフィスまで出向く旨を伝えた。
そいえば、動物写真家の岩合光昭さんは、用件があるならそっちから来い、とナショナルジオグラフィックの編集者に言っていたのを何かの記事で読んだ。
そんなくだらないことを思い出しながら、2キロ先のオフィスへ向かった。
もちろん、売れることが確実な写真家であれば、出版社が写真集を製作するのは米国も同じ。
リスクの高い製作では、たぶん初めに自費制作を勧めるのだろう。
おそらく作れば売れる、自費制作の形になるのは仕方がないが、全面的にサポートはすると言ってくれた。
これは確かにチャンスだと思った。トッドの会社はアラスカ中と、アメリカ本土にも卸せる店とのコネクションがたくさんある。
ただ、この機会は、考える必要がある種類のチャンスだと直感した。
来月、シロクマ撮影に行く飛行機に、一席空きがある。
これは飛び乗る。
近所の森で、めずらしい山猫の親子が現れた。
これもすぐ車に飛び乗る。
ギャラリーに数枚写真を飾ってくれないかという誘い。
これもほぼ即答で、お願いしますと言う。
しかし、「写真集」という言葉は、僕にとっては重い。
意識し続けているものの、自分の中でまとめることができたことは、一度もない。
「アラスカ」というテーマでは、まだ写真が足りない。テーマをひとつに絞ってみても、
まだ写真が足りない。
要するに、自分の中で満足のいく、一連のまとまりという物を、所持していない。
今月から2ヶ月間で、考え、企画を提出する、という試みはしてみる。
もちろん本気でやらなければ、やってみたときに成果をきちんと評価できないから、
手を抜かずにやってみよう。
うまく行けば、来年の3月頃に出版される。無理なら今回は断る。