2011年3月30日水曜日

マイケル・クイントン研究 -part 3-


この写真は構図やライティングについて考察するよりもこの状況について考えた方が得るところが大きい。

基本撮影データ予測:1/500 f/5.6 ISO400 200mm

背景のボケかたと全体の遠近感からして撮影距離はそこまで遠くない。このリンクスにそこまで近づいているところがまず驚かされるところ。おそらくテント型ブラインドをもちいて数週間あるいは一ヶ月以上探し続けたか待ち続けたに違いない。国立公園外であればキャットルアーを用いたかもしれない。少なくともリンクスに遭遇できる可能性の高いポイントを見つけるまでに数ヶ月かかっているだろう。マイケルクイントンはそのようなことができる写真家である。実はこれ以上彼の行った具体的なアプローチを考えつかないが、たまたまこの状況に遭遇して素早く撮った写真ではないことは明らかである。
 もう一つ考えられる可能性の高いストーリーは、右隅にマスクラットの巣穴らしきものがある。マスクラットがここに巣穴を作るということは、クイントンは川を挟んで対岸に対象を観ていることになり、場面は川辺である。初めにリンクスはこのラットを追ったのだが巣穴に逃げられてしまっている。そのような雪の乱された痕跡がある。リンクスは「待ちの名手」の異名を持つことから、その大きなカンジキのような足で音を立てずに忍び寄り、待ち続け、クイントンも事前に予期して待ち続け、マスクラットが巣穴からひょっこり出て来たところシャッターを切ったものではないだろうか。この続きの写真も2枚あり、このマスクラットは仕留められている。

2011年3月20日日曜日

Open North America Championship

スプリントの犬ぞりレースがフェアバンクスで開かれた。

不景気により優勝賞金が下がったことから参加数は減り16チーム。しかし犬たちはそんなことおかまいなしに全速力。金、土、日と同じコースを三度走りタイムを競う。


スタートから5分、坂道をくだりこの季節アイスブリッジとなっている川の上へ。

一番スピードの出る下りからのカーブを過ぎ、チームは全速力で川の上の直線コースへ。

2011年3月14日月曜日

ICE -soft rime-

フェアバンクス郊外、標高650メートル付近の樹氷

枝の真っ先まで樹氷に覆われる。こんな状態で春の準備を進めていることを考えるとやはり植物は忍耐の生き物だと思う。



月の明かりに照らされる針葉樹の樹氷

 北極圏間際のモンスター樹氷
ユーコン川の湿気がこのような固まりの樹氷を作る。


日照時間が延びるにつれて樹氷は落ちて春の準備。

2011年2月17日木曜日

写真販売






写真の販売契約成立。
フェアバンクスの大学博物館で来週より自分の写真を販売できることになった。知人に博物館のマネージャーを紹介してもらい自分の写真を紹介。いままで何枚もの写真を見て「売れる写真」を選んで来た人の反応はやはり厳しい。彼の本音は売れなければ置く価値がないこと。こちらの本音は一枚でも多く並べたいこと。1枚くらいは選んでくれないと困ると思いながら彼の目線を追っていた。結局10枚を販売用に包装し売り出すことになりそうだ。

写真は他で人がやっていない形での売り出しスタイル。ユニークなハガキで生写真が挿入できるようになっており、そのまま飾っておいてもいいよう二つ折りになっている。写真を入れるとちょうど白枠でフレーミングもされるので見栄えもいい。裏には自分のプロフィールと写真の説明を加え、メールアドレスを添えたウェブ予告も添付する予定。

現在のガイドの仕事が忙しくなる前に完成させたい。というのも僕の構想として、できるだけ多くの日本の人たちに自分の写真を見てもらいたいということがあり、17日からのJALのチャーターで3月半ばまでに3000人の人たちがこの博物館に訪れるからだ。他のガイド仲間や取引先にも協力的な方が多いのでツアー中の宣伝を促したい。

以下、販売写真のラインナップ










2011年2月12日土曜日

how to perch

スプルースの頂点に2羽(クリックで拡大)


2月、ハクトウワシの撮影に出かけた。
撮影しながら観察しているとハクトウワシの木のとまり方に特徴が見えた。彼らはスプルースの木が大好きでその木のできるだけ高いところで羽を休める。もしかするとこの木が三角形で高いところだと眺めがよく、気持ちがいいのかもしれない。

 一本では支えられないと判断して、2本の枝を片足一本づつつかむ。

 そのまま1本の枝を他方へたぐり寄せて束ね、安定を得る。

こちらの個体も(少しわかりづらいが)同じように2本の枝を右足で掴む。

 ある程度太くしっかりした枝には落ち着いて留まることができる。

 枝が斜めでも、太ければ留まれる。ちょっときつそう。

3年目から大人の羽が生え始める2歳くらいの若鶏。彼ら幼鳥はスプルース(エゾマツ)の先に留まるのを見たことがない。どちらかと言うと上の写真のようなカモフラージュとなる木にいるのを目にする。

いづれにしても、どの個体も留まる木自体は選んでいるようだ。基本的に木がピンとしたものには留まるが曲がりくねった不安定な方へは留まらない。ちゃんと見分けているのだろう。留まる木の下には彼らの糞が溜まり、その木の栄養分となる。木はより多くの鳥に留まってもらうよう、何か工夫しているのかもしれない。


2011年1月30日日曜日

オプショナルツアー

写真家柳木氏の写真撮影のツアーに同行。
場所はアラスカ州フェアバンクスの町の中の自然。
僕は仕事での参加だったのだが、柳木氏は僕が写真をしているのを知っていたので、今回は生徒として参加させてもらった。

ツアー当日はあいにくの悪天候だったが、プロとなると悪天候とは認識しない。そのなかで見つけられる対象を探していく。

柳木氏の勧める撮影箇所で、みな自分の構図を見つけて撮影し、見てもらう。

フェアバンクスの町の中の雪景色を撮影するツアー。身近なところにも撮影対象はあるということを考えさせられた。

 途中記念撮影も。

オーバーキャストのおかげでコントラストが落ち、ZEN感覚の写真になる。こちらは柳木氏の決めた構図。

チェナ川沿いを歩きながらいいスポットをみつけ、構図を決めた後、細かなカメラの調節をしながら数枚撮影する。


柳木氏は現在、自身の写真撮影活動はあまりしていないそうだが、なにかもう一度ビッグプロジェクトを計画していると言う。

2月にまた会う予定なの一度飲みながらその話を聞いてみようと思う。

2011年1月15日土曜日

マイケルクイントン研究 -Part 2-



基本撮影データ予測:1/250 f/8 ISO400 600mm ミラーレンズ使用 三脚あるいはそれに代わる固定機材使用 フラッシュ使用(?)

いい写真にしているポイントを考えてみると、
①サイドライティングによって対象に立体感を与えている。②対象と背景との距離が十分あるために背景全体がうまくボケている。③対象と同じ目の高さから撮影することで違和感のないパースペクティブになっている。④ピントを近い方の目に合わせている。

おそらく「置きピン」での撮影。背景からミラーレンズを使用しているのは間違いないが、フクロウのすむ光量の少ない条件下でミラーレンズを使いこの露出を得ながら、ピンがしっかり来ていることから、あらかじめピントを合わせておき、対象(フクロウ)が来たところでシャッターを押す置きピン撮影と考えられる。レンズ選択、対象、光条件を素早く判断したプロの仕事であるのはすぐにわかる。置きピンであるというのは予測にすぎないが、だとすると、フクロウが人の目の高さの木に止まることは考えられないので、彼は対象の止まるこの木の高さまで登って待ち、シャッターを切ったことになる。
彼の撮影するフクロウの写真の中でも、光と背景がフクロウという被写体に一番マッチしている一枚といえる。