2009年6月19日金曜日

McNeil River -part 2-



カブの鮭狩り奮闘記



プロフィール:2歳オス。
鮭狩り歴、推定1週間。



午後5時半頃、母親とともに子カブが登場。



母親に甘えている仕草。
母親は冷静に周囲の状況を探る。


この時、周りには他の大人あわせて6頭が姿を現していた。
子カブにかまわず、母親は食事のため鮭を狩りに川へ。
カブは少し出遅れる。


母親は次々に鮭をとる。
カブは周りの大人の熊たちにおびえ、全く落ち着きがない。



母親とは異質な臭いにおびえる。



両方の川岸に大人の熊たちがいたので、常に逃げ腰。



しばし休憩。



ここから子カブの様子が変わり始めた。



不意に鮭をねらい飛び込む。


が、失敗。



失敗しながら何かを教えてもらいながら、



母親の獲ったものをいただく。



食べきれないほど、いとも簡単に母親は捕まえる。
このとき、母親は鮭を与えようとはしなかった。



練習再開。



片手で。
ちなみに大人たちをみていると、両手で飛び込むものの方が多い。



本日初の獲物・・・か。


どうやら鮭はつるつる滑るらしく、くわえるまで手こずっていた。
が、なんとか。



自分の獲物は安全な場所へ運ぶ。



だれも邪魔者はいないか、辺りを見回す。



邪魔なのはカラスだけ。
カラスには強気。


警戒しながら、ぎこちなく食べる。


7時半、食べ終わると、母親とともにゆっくり姿を消していった。
子カブは最後まで落ち着かない。




ゆっくり、カメラのファインダーを通して観察していると、この子カブは今回初めての狩りなのではないかと思えるほどだった。人間からみれば何も起こっていないのに、なぜキョロキョロとしているのだろうと初めは思う。しかし彼は、とんでもない恐怖を嗅覚から感じているのだと思う。ヒトにはわからない動物界のこと。
狩りの最中で、母親が途中から捕らえた鮭を彼に与えなくなったところから、このカブは何度かは狩りを経験しているのだろう。しかし本当のところはわからない。ただ、彼には自分でエサをとる力があるので、大人のオスに襲われない限り、生きていくことができるだろう。その点で、警戒しすぎでもしすぎることはないのかもしれない。
そんな、親離れを感じさせる子熊だった。





2009年6月17日水曜日

McNeil River -part 1-




3日間のクマの撮影1日目。

場所は南西アラスカのマクニールリバー。カトマイ国立公園に隣接するサンクチュアリ。野生動物保護局が独自に保護・研究している特別区域だ。アンカレッジから車でホーマーまで。ホーマーという町からはエアータクシー(飛行機)でしか行くことができず、着陸できる機体も保護局に登録されているものだけに限られている。


見にくいが、地図の黒四角の部分が目的地。


ホーマーからセスナに乗り込んで出発。

離陸から一時間ほどでキャンプ地の上空。
写真は機内から撮影したもの。キャンプグランドから2日目に行く撮影地点までの道順。

キャンプ地手前に着水できるのは潮の満ちているときだけ。


おりてみるとその場は流木だらけの砂州。
写真の向こうは湾で、後ろは河口。


荷物全部。

到着後、レンジャーの方から地域内での行動の注意点などのオリエンテーションを聞き、明日の準備をしてすぐ寝た。寝る場所は上の写真にあるように、もちろんテント。


潮干狩り熊。
潮の引く時間を知っているかのように適時に現れ、せっせと掘り出した。


各撮影ポイントにはこのような小さな滝がある。撮影ポイントになる理由はいい写真が撮れるからではない。滝のためにサケが遡上を阻まれ、溜まり、熊がそこによく現れるからだ。



目は悪く、鼻がすごくいい。
観察しているとそれがすぐにわかる。



撮影隊の帰り道。
実際10人のうち本格的に撮影・観察していたのはレンジャーを含め5人。
先頭がレンジャーのトムさん。



キャンプグラウンド中央にあるキャビン。
ここに食料を保管し、食事を済ませる。


ほかはコミュニケーションの場。
ここで会ったカメラマンに三脚を使うことを強く勧められた。






熊が一頭。    ※クリックで拡大できます。



2009年6月8日月曜日

Kenai Fjords National Park

熊の撮影に入る前に、運良く無料でクルーズツアーに参加できた。

場所は南アラスカのキーナイフィヨルド。




上の地図内の四角の部分を拡大したのが下の地図。




この地域の生態系の頂点に君臨しているシャチ。呼吸のため何度も水面から姿を現していた。


Humpback Whale 、日本名でザトウクジラ。スラップやブリーチングなどの大きな動きはなく、終始ゆっくり泳いでいた。


エトピリカ。ツノメドリとは少し異なる。体をまっすぐにして、重たそうに飛ぶ。お世辞にも綺麗とはいえない飛翔。船が近づくと煩わしそうにその場から飛び立っていった。この種が北日本にも生息していたとは知らなかった。



耳をすませると小さな氷のかたまりが落ちていく音が聞こえる。思っていたよりずっと低音だ。



Mountain Goat 、日本名でシロイワヤギ。写真の彼らがいる場所は海面から50メートルくらいの断崖。母親が心配そうに、何度も子供たちの方を振り返っては立ち止まり、また進んでいた。



彼の寝相がいちばん個性的だった。



食べ終わると、特に何もすることがない。


しかし一部の母親は別。見ていると、子供に何かを教えているようだった。



カモメの営巣地。日本のマンションもこんな感じだろうか。



無人島、頂上に何か建物の痕跡が見える。

一日数センチ移動しながら、何万年という単位でやっと一巡する気の遠くなるような水の循環。




自分で具体的な対象を狙って撮影へ行くとなると、自ら船かカヤックなどを出す必要があるのだろう。一つの対象に当てられる撮影時間は短かったけれど、いい経験ができた。


2009年5月19日火曜日

Editorship

今まで撮りためた写真でポートフォリオを作成した。動物のみのカテゴリーで20枚ほどのアルバムだ。
そのアルバムをいろんな人に見てもらって、面白い考察を得ることができた。

まず、ぼくのポートフォリオを見たとき、僕のブログをたまに見てくれている人と、僕のブログ自体を知らない人の反応が全く逆だということ。これは面白い結果だと感じた。ブログを見てくれている人は、そのプリントになんだか不満げな、納得いかない意見や表情をする。ブログを知らない人の反応は写真を見て驚いたり、どう撮ったかなど積極的に聞いてくれる。この違いを冷静に考えてみると、ブログを見てくれている人がただ単に自分の写真のほとんどを一度見たことがあるから消極的な反応だった、という理由だけではないようだ。

原因を探ってみると、2つの可能性が考えられた。
一つは透過光と反射光の違いからくる見え方の違い。パソコンのモニター上で見る光はスクリーンを通過して目に届く透過光であるのに対し、反射光は光が紙面に反射してその光が目に届いている。この違いは一般的に透過光のほうが反射光に対し、色空間がひろく、色彩が鮮やかに感じられるとされている。

もう一つは、「全体は部分の総和にあらず」という考え。全体としてのポートフォリオはポートフォリオとして考えなくてはならない。いいと思う写真をファイルするだけでは不十分だった。
ブログに写真を載せるときは一つの写真に対して説明を加え、その写真について、なにかしら物語が付いている。それはそこで自分なりに完結させている。しかし、ポートフォリオはただ単純に写真をファイルしていただけで、コンテクストもなく、実は並べ方などほとんど考慮していなかったという欠点があった。フォトグラファーの写真集などを見ればすぐに気づくことだが、写真の前後にどういうものが並んでいるかによっても感じは大きく変わってくる。この並びに関して、大差はない、などと考えるようでは、プレゼンテーションをする資格はない。
もちろん、全体を構成する部分のクオリティーが低ければ写真の場合どうがんばっても、そう良いものは生まれないだろう。また、絶妙なコンビネーションを作る感覚も持ち合わせていなければいい表現はできないのも確かだ。

2009年5月8日金曜日

写真上達過程回想五年

何か勘違いしているのかもしれない。こういった疑問は時折自分に問うようにしている。

大学三年のころ、写真を始めてすぐにフィルムカメラを壊してしまってから、僕は一眼レフデジタルカメラの Canon EOS Kiss という機種に買い替え、使用していた。この機種は、一眼レフデジタルを一般の人にも普及させるために発売された初心者用のものだった。
3年ほど経ったある日の、自分自身で発言したある言葉を正確に覚えている。前に勤めていた会社で昼食をとりながら写真について話をしていたときのこと。「僕の使っている Kiss(カメラ) はやっぱり限界を感じますね。遅いです。」と言った。確かに動体撮影をする上では、レンズだけではなく、カメラ本体の性能も重要になってくるのだが、今でこそそれを十分感じるようになってきたものの、当時の僕はほんとうの限界を知らなかった。たぶん、いい写真が撮れないことに言い訳をしていただけだった。体験からの発言ではなく、ただの知識からの発言であった。本当にその機種で本気で撮ろうとしていなかったに違いない。そしてそれから2年後の去年の夏、写真のことを深くも知らずに、プロが使用する機種に手を出した。写真は、確かに良くなりつつあった。
写真は今でこそわかるが、経験により上達させていくことができる。そしてそれは、カメラというメカにかかる比重よりも、自分の精神、考えの深さや洞察などのほうがはるかに大部分を占める。そう考えると、いまさら後悔しても仕方の無いことだが、一つの重要な実験を逃しているといえるだろう。僕の写真は、2年前に比べて良くなったことは間違いない。しかしそれは、上級者用カメラに早い段階で買い替えてしまったことによって、純粋な自分の写真の上達なのか、カメラの性能による自分の写真の上達なのかを曖昧にしてしまった。これをもし、kiss でずっととり続けていたらどうだったろう。間違いなく、純粋な自分の上達過程を明確に伺うことができたはずだ。どうせ今でもアマチュアの写真家である。今まで撮ってきた写真などすべて実験にすぎない。どうせなら初級者用のカメラで撮り続けるべきだったのかもしれない。

かといって、いまからそれをやれるほど僕に忍耐はない。1回や2回の撮影行でこういった実験の結果が出るわけは無く、そのため時間もない。今年夏の撮影行はひとつの勝負になるからだ。マクニールリバーでのクマの撮影にその実験をしてみようとはどうしても思えないのだ。初のオオカミアプローチに Kiss なんかで臨みたくない。そこでは自分の最高の機材と状態で臨みたい。そういった意味では技術発展した世の中のように、個人の視点からもそれは後戻りができないのかもしれない。その点で、ひとつの実験を、アマチュアの時にしかできない実験を逃していると言える。

こういうところで、自分の技術発達の苦労をお金で簡単に解決しているために、長い時間をかけて自身を精進させていったひと昔前の写真家のような、深みのある写真が自分に撮れることはないのかもしれないと考えてしまうこともある。ほんとうのところはわからないが、ただ、あるひとつの、おもしろみのある実験を逃したという事実だけは残る。



2009年5月2日土曜日

Chase the wolves -part 4-



来月6月半ばから、本格的にオオカミを追跡する時間を設けた。場所はデナリ(Denali)国立公園。上の地図でわかるように、場所はアラスカの真ん中に位置している。
オオカミとの遭遇の可能性を高めるために、事前の準備が欠かせない。撮影のための資料としては古いが、オオカミの群れ(以下、パック)の動態を知る上ですごく参考になるのが生物学者のまとめた文献である。オオカミ研究の権威デビッドメッチの資料によると、デナリ周辺には20年ほど前から15ほどのパックが確認されている。その中でも比較的定住傾向にある群れが2パック、 East Fork(EF)と Headquoters(HQ)と名付けられているパック。

EFパックはアドルフミューリーが世界で初めてオオカミ研究をしたときの対象となったパックだ。彼の研究は1940年、下の図でメッチの研究は1990年前後。少なくとも50年以上群れのテリトリーが固定している。



テリトリーの大きさはリーダーの強さやパック内の個体数によって変化があるそうだが、この図からすべての年のテリトリーが重なっている核のようなエリアを見ることができる。僕の考えでは撮影の可能性を高めるのはこのエリア。あるいは、詳細情報が得られれば、テリトリーのエッジの部分も可能性は高いと考えている。なぜなら、テリトリーのエッジはパック内のオスたちが縄張り確保のためマーキングとパトロールをする場所であり、頻繁に通るからである。

 East Fork パックを選んだもう一つの理由は、先程述べた核となるエリアへ車でアプローチできるからである。そこで、デナリの地図とEFパックのテリトリーをフォトショップで重ねてみた。

核のエリアを灰色の線が通っているが、ここが道路。そこから、Toklat River を北上していくとEast Fork の川にたどり着く。
まず、このエリアへ入ることになるだろう。

それからもう一つが  HeadQuoters のパック。

このパックも比較的定住傾向にあると考えられる。テリトリーと地図を重ねてみると、

 サベージリバーキャンプ場に、核のエリアが重なる。このキャンプ場をベースとしてサベージリバー南下の撮影行を繰り返すと良さそうだ。

バックカントリーで国立公園へ入るのが初めてなので、川がとても重要になるだろう。これに沿って歩きさえすれば、道に迷うことがないからだ。


しかし、なによりも最新のオオカミ動態の情報が必須である。これら二つの定住傾向にあるパックについての研究とウェブでの情報収集を並行して進めて、現地到着前にフェアバンクスのADF&Gへ再び行く必要がありそうだ。