2009年8月26日水曜日

撮影 宿題 授業


2年目の秋学期がスタートした。

今期、写真のクラスは Advanced Photography と Color Photography を受講する。

Advanced Photography のクラスでは写真家としてのスタートを切るための授業内容になっている。これまでのクラスのように、一つのアサインメントに対して数枚の写真を創っていくのとは異なり、自分ではじめにポートフォリオ(作品集)の構想を練り、それに沿ったアサインメントを自分で決めて撮影プリントし、作品を制作していく。主に教授はそのポートフォリオの制作とプレゼンテーションの仕方に関わり、撮影の技術的なことに関しては口を出さない。
 こちら米国では、ポートフォリオがそのアーティストのビジネスを左右すると言われているほど重要視されている。そのような伝統からか、印象としてはこの授業まるごと、ひとつの作品集づくりのための授業に構成されているような感じを受ける。


Color Photography の授業では、昨年までのフィルムでのカラー写真から完全デジタルに移行し、薬品を使った現像/焼きのレクチャーをいっさいせずに、光の読み方とそれによって現れる色についての講義とデジタルワークフローに焦点が当てられている。個人的にはケミカルワークフローを学ぶよりも、色の関係性や効果的な色の画面配置などを学びたかったので、好ましい方にカリキュラムが移行された。







Denali 総括



Denali National Park


先週デナリから戻り、遭遇した動物をまとめてみた。



:ムース :カリブー :ドールシープ
:ブラウンベア :齧歯類(ジリス除く)
:リンクス :猛禽類 :オオカミ


総滞在日数:15日間(うち、晴天:9日、曇り:2日、雨天:4日)

行動時間詳細(パークロード:45時間、ツンドラ:15時間、タイガ:10時間、山岳:25時間、河川:35時間、ブッシュ:5時間、キャンプサイト:30時間、パークエントランス:40時間、睡眠:130時間)



Curious Bear

終わってみれば、熊にはいちばん数多く遭遇した。自分の歩いたところが熊の行動ルートだったからなのか。そのあたりは定かではないけれど、パーク内に1000個体以上いるムースやカリブーよりも多くみたということは自分の行動に何か特徴があったか、熊がパークウェイ沿いをよく歩くかどちらかだろう。


オオカミの巣は結局見つけることができなかった。この新しい足跡とほかに糞が多くある場所まではきていた。しかし、仔が育つ秋に近づくにつれオオカミは巣穴を離れていくため、8月下旬にオオカミを撮影するため巣穴を探索することは正しい方法ではなかったのかもしれない。


オオカミ撮影は来年に持ち越された。





2009年8月15日土曜日

Flattop mountain





 天気がよかったので、冬に登ったフラットトップに違った景色を求めてまた登った。今回は頂上まで登ることができた。雪が全くないことが、以前登った山とは思えない景観を現していた。
この山だけに限らず、アンカレッジやその他のアラスカの夏を過ごしてみて、一度行ったからといってその場所を知っているとは言えないと改めて思った。同じ場所なのに季節によってまったく違う表情をみせるこのような町で、今まで過ごしたことがないせいか、同じ場所に立っている感覚がない。
頂上から眺めていて、去年見逃した秋に、多くの場所に出かけたいと思った。

2009年8月11日火曜日

Eternal recurrence




いつの頃からだったか定かではないけれど、小さい頃、過去と未来についての想像を膨らましたときに、おぼろげながらひとつの考えが浮かび、それを26歳の今でも引き続いて所持していた。その考えとは、人でも動物でも皆、生まれ変わったとしてもまた同じ自分で、全く同じ人生を歩むんじゃないかという何の根拠もない仮説のようなもの。幼かったので論理立てて明確に考えられた訳ではないけれど、たしかにそれを考えていた。そして人に話すようなことでもなくしまわれていた。
そして偶然、先日それが永劫回帰という言葉で先人が論じているのを知って、非常に驚いた。読んでいると当時思い起こした概念と全く同じ。どこかで見たか、誰かから聞いたことをそのまま覚えているのではないかと、自分の過去の記憶を疑った。しかし、ニーチェの本など過去に読んだ記憶はなければ、こんな話しを真剣に子供に話す人もいないだろう。
小さい頃の何でもない考えが、自分の世界観を作っているのだと思うことがたまにある。何の根拠もないところから自然に生まれてくるからこそ、信じてみたくなるのかもしれない。


2009年7月21日火曜日

Kennecott -鉱山の町とその歴史-




Kennecott Mill





Kennecott の町は国立公園内に位置している。


ゴールドラッシュより半世紀、1900年に2人の採掘者により、アラスカに良質な銅山があるという情報がニューヨークに伝わる。Stephen Barch という若い採掘エンジニアによってその採掘権は買われ、J.P.Morgan などの巨大な会社の協力のもと、即座にインフラが整えられ、採掘は開始された。その銅を精製する場所として誕生したのがこの町。
しかし1938年秋には閉山。最後の銅を積んだ列車が去り、町はゴーストタウンとなる。



三つ窓のある建物が病院。
ここにはアラスカで初めてのレントゲン技術が導入された。



Bonanza Mine

Kennecott の町はこのメインの鉱山を含め5つの鉱山から銅の鉱石を集め精製していた。この鉱業場は現在政府に保護されていて、中に入ることもできる。



GEのエンジン。



巨大な滑車で山の麓の町まで鉱石を運んでいた。





鉱石の質を調べる部屋のように思えた。
当時の鉱石の質は体積の70%が銅という、アメリカ最良の銅山だったらしい。



何に使われる道具なのかわからない。
100年前の状態がそのまま残っている。



採掘場の入り口。
雪で埋もれて入ることはできない。

出稼ぎの労働者は当時、低賃金で週七日間働き続けたと記されている。その収入はアメリカ本土にすむ家族に送られていたそうだ。



採掘場から急峻な崖をつたって、鉱石が運ばれていく。





町の精製工場の中には十数段階を経て銅を精製するための層がある。
純粋な銅は、列車に積み込まれ、150キロほど離れた港町まで運ばれる。




現在この町 Kennecott は観光地と歴史的遺産としてアメリカの旅行誌やウェブサイトなどで見ることができる。日本の有名なガイドブックではナショナルパークがコラムとして取り上げられる程度で町のことまで触れられない。アクセスの悪さから旅行者にとっては効率の悪いスポットなのだろう。町も賑わっているとは言えない。しかし、そのことが逆に、この遺産を保護し、感慨深い場所になっているのだと思う。






2009年7月12日日曜日

Chase the wolves -part 5-


 オオカミの撮影を構想し始めて1年半、実際に撮影しにいく計画を実践できた。今回の場所はデナリ国立公園。結果、失敗に終わったが、なぜ見つけることができなかったのか考察する必要がある。

 その考察を今回のデナリ撮影行のみに焦点を当ててみることにする。撮影前の情報として、オオカミの行動パターンを The Wolves of Denali をもとに研究した。現地に行く前日に Layne G. Adams に会い、デナリ国立公園のオオカミ生態についてインタビューした。彼は先述の The Wolves of Denali の著者 David L. Mech とともに研究し、現在 USGS Alaska Science Center で調査研究を行っている生物学者である。また、現地に到着後、レンジャーにオオカミ捜索の方法とオオカミの巣(Wolves' Den)がある場所を尋ねた。
 そして、撮影に臨む際、 Adams 氏から聞いた、オオカミを見かける可能性が高い場所(Storny Dome, Polychrome Pass, East Fork & Toklat River area)に焦点を定め、そこへ入るための許可証をとり、以上の箇所に2泊3日ずつ、3回にわたり計6泊9日の撮影行を試みた。

 以上、大きく3つ。事前知識の習得、学者からのアドバイス、レンジャーからの情報をもとに撮影に臨んだことになる。しかし、撮影できるような状況に自分を置くことはできなかった。
 1つめの自分でのオオカミ勉強の目的は、撮影の際の描写以外に、学者やレンジャーから貴重な情報を引き出すために自分でもオオカミに対する知識をつけておくことだった。 
 では2つめの学者からの情報。今考えてみると、これには利点と欠点がはっきりと考えられる。利点は撮影のためのオオカミの生態情報を得ることができたこと。
 Adams 氏によれば、この時期オオカミは群れ一丸となり、子育てに専念しているということ。ジリスも冬眠しておらず、エサとしては豊富にあること。(群れで大きな動物、ヒツジやシカなどを狩ることはこの時期、非常に珍しいとのこと。ほとんどないと言っていた。)他に、外気温が高く、体力を奪われるため、巣からの行動範囲は限られることなどの話しをしてくれた。これらことから、オオカミの巣の位置がどこにあるのかを突き止めることが非常に重要であったことは理解していた。(ちなみに正確な巣の位置を示すGPS情報はもちろん教えてくれない。)
 欠点は、彼ら生物学者はオオカミを捜索する際、ラジオカラー(電波を発信する研究用の首輪)をもとに、上空からそれをつけたオオカミを見つける。そのため、学者はオオカミを「見つけること」に時間をかけてきた訳ではないということ。 
 3つめのレンジャーからの情報。これは遭遇の可能性を高めてくれていたに違いない。オオカミを捜索する場合、川沿いに注目すべきだということを教えてくれた。どの状態でどちらに向かって歩いているか知ることで、巣の位置がだいたいわかるということ(エサをくわえて向かっている方向はだいたい巣のある方角であるなど)。実は園内で立ち入り禁止されている場所は、オオカミの巣のある場所であるということ。(これは人が危険だからではなく、オオカミの個体数を維持するために保護の目的で閉鎖している。)

 
 オオカミを撮影できなかった理由として考えられることは、

1、滞在期間、観察時間が短かったということ。
2、Adams 氏のアドバイスをもとに撮影場所を設定したこと。
3、滞在期間気温が高く、オオカミの行動は抑えられていたこと。
4、オオカミの巣がある位置はエリア閉鎖されて入れなかったこと。 

 などがあげられると思う。


今年、もう一度トライする機会を作る。


Denali National Park -part 2-







デナリの住居者



オスのムース。角にベルベットと呼ばれる皮をまとっている。



カリブー。二匹ともメス。
カリブーはシカの仲間で唯一、雌雄ともに角が生える。



ゴールデンイーグル。容易に近寄れなかった。
彼らは望遠レンズと同じような目を持っている。



夏毛のライチョウ。



ナキウサギ。
必ずこのような瓦礫の岩場に住み、いつも鳴き声をあげているだが、見つけるのが難しい。



ビーバー。
警戒心は無く、のんびり食事をしていた。



ハタネズミ。すぐに姿を消す。



ホッキョクジリス。
冬の間、自分の体温を氷点下近くまで下げて冬眠するリス。
警戒心も強いが、好奇心もつよいジレンマがある。



ホーリーマーモット。けっこう大きい。
一家団らん中お邪魔した。
一定の距離に近づくとサイレンのような金切り声を上げて子供たちに注意を促す。