2012年4月18日水曜日

霧(きり)についての考察



霧と雲は本来同じものだが、見る側の位置によって名称が変わる面白い言葉の区別だと思う。

雲は空に浮いている蒸気のかたまりなのに対して、霧は地上に接している蒸気と定義できる。


北極圏ブルックス山脈

写真を撮る側としてもこの違いは大きい。単純にどちらも風景写真にひと味加えてくれる。雲は形や光を反射しているその具合によって、一枚の写真をドラマチックにしてくれる。霧は光を拡散させて、写真全体に静寂感をあたえる。

たとえば、雲については上の北極圏での写真だが、ちょうど霧と雲の中間を写したもの。霧は朝方、低い位置で結露しやすいので、狙うとしたら早朝がいい。車でこの山に近づいているときは、まだ裾野まで霧が広がっていたが、30分ぐらいして三脚をセットする頃にはほとんど山にぶつかって、雲になっていた。写真としてこの山をさらに強調するためには、この蒸気に加えて、太陽の光が射込んでくるとよかった。南が晴れていたので1時間くらい待ったが、状況はほとんど変わらず、霧はすべて雲になった。


霧の中を群れをなして飛ぶカナダガン

これは朝5時30分ごろ、水の多い湿原のそばを歩いていたときに撮影したもの。これは蒸気が均一に地上に広がって発生していたので、一枚の写真のなかに光がバランスよく拡散されて、いい雰囲気が出た。

霧はすべてそのまま上昇して雲になるかと言うとそうではないと思う。この日は確か、午前8時間ごろから晴れた。水辺の近くで朝方という条件は霧を作りやすいに間違いないけれど、たしかに発生することを予想するのは難しい。


デナリで見られる風景

この写真は霧から雲に変っていく途中段階での、同じく朝方撮影した写真だが、蒸気が巨大なディフューザーとなって、太陽の光を拡散させている。オレンジ色の朝の光が景観に均一に入ってきているので、霧のない朝はこのような風景は観られない。

おそらく暖かい夜から朝にかけて、ふつうは太陽が次第に地平線に近づいて気温が上がるところ、そうではなくて、気温が下がるような日に霧が発生している。


ドラマチックな雲を狙うなら、暖かかった日の夕方。
静寂をかもす霧を狙うなら、水辺の冷える朝方。


アラスカの静寂をひとつテーマとして撮りたい場所がいくつかあるので、これらを考慮して撮影に臨もうと思う。







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