2012年10月28日日曜日

Single photography with a theme

Ephemeral autumn wind

写真は、「短い秋を通り過ぎて、長い冬へ向かう季節の移ろい」を一枚の写真で表現できないだろうかと考えて撮影したもの。

2012年10月20日土曜日

組写真を考える


組写真は、いままで僕が試したことがない写真表現の領域だ。似たことを試みたことはあるけれど、表現を意識したものではないし、正しい制作過程を踏んだわけでもなかった。

まず、単写真とは、一枚の写真で完結させた写真のこと。テーマはひとつに絞る必要がありそうだ。たった一枚の写真に複数のテーマを設ければ、伝える力が分散することになる。
組写真とは、2枚以上の写真を使って、複雑なテーマを題材とする。したがって、一連の写真の中の一枚の写真が、何かを意味していないこともあり得るわけだ。あくまで、全体として表現されていれば成功ということ。

このことを考えると、今後の撮影方法も変わるだろうし、ひとつの大きなテーマにも取り組んでいけることが明らかになる。

組写真の制作過程は、ウェブや書物で調べてみると、まず大きなテーマをひとつ設定し、そのテーマの大きさ(幅広さ)に従って写真枚数をある程度絞り、必要なカットに分解して、撮影を進めていくというのが王道のようだ。

本来、撮影後のカットをパズルするのではないが、 まずテーマを決めて、要素を細分化し、その分解された小テーマに沿う写真が、自分のストックの中にあれば、合わせてみても良いだろう。(イメージトレーニングとして)早速ためしをしてみる。

テーマ:Bears in summer

母親にサケの獲り方を教わる

サケを川の浅瀬に追い込む

体ごとサケに向かって飛び込む

うまくサケをとらえる

ぬれた体の水を切る

表面的には、川にいるクマを写真に表すだけ。それを5枚重ねることで、クマにとっての夏は、サケ獲りに忙しく、サケ獲りはクマにとって切り離せない生活の一部だということを伝える。そのことに加え、一生懸命なクマの様子を表現してみた。


< クマたちの夏を掘り下げた結果、得られた表現意図 >
「サケの遡上する川で、サケ獲りに懸命なクマたち」
  ・表現意図:サケ獲りシーンを複数組み合わせて、クマの夏を表現
  ・個々の写真:クマのサケ獲りに関わるシーンをアップで、動きある写真に
  ・写真の構成:水しぶき、クマ、サケを含める

※上記まとめ方は、HP<我が道を行く写真道>を参照


2012年10月14日日曜日

オーロラと写真のオーロラ

アラスカで頻繁に見ることができるオーロラ

アラスカにオーロラを見に来る方で、カメラを持ってくる方が増えているように思う。
 日本では見られない現象を、記念に残したいという人がほとんどだろう。

ひとつ残念なことだが、このすばらしい現象は、カメラに収めた画像を見ると、肉眼で見るよりも色鮮やかに、ロマンチックな雰囲気まで加えてあらわしてしまう。

あたりまえだが、日本でオーロラに関するあらゆる情報を見るときに目にするものは、カメラを通過した「画像」を見ることになってしまう。

ここでまず、オーロラの「色」に対して誤解が生じる。
また、静止しているものだという勘違いもでてくる。

これらオーロラ写真については、ある意味で、嘘をついていることになってしまうのだ。

このことが最近旅行者とともにオーロラ観測に行くと、皆からよりはっきり言葉として出てくるようになった。

では、一体ほんとうのオーロラとはどんなものなのか、これは実際に見てみないと、正確に伝えられない。写真より色彩が劣ることと、実際に動きのあるオーロラの方が、数倍感動することは確かだ。


いちばんのオーロラ観測の醍醐味としては、「オーロラの動き」は、現場で見なければわからないし、これを見て解説が加わると、オーロラがどんなものかが実感としてわかるということにある。

ここに感動できる人は、アラスカのみならず、自然を正しく見ることができる人だなと感心する。

この感動を、どうしても写真で伝えることが難しいために、僕はオーロラは写真よりも、まだ動きの加わる映像の方が、そのものを正確に伝え、またより感動を伝えることができるものだと考えている。

それにしても、動きのあるオーロラは、1秒ごとにその姿を変え、夜空をロマンチックなものに変える。僕がオーロラ撮影を辞められない所以がここにある。当面の課題としては、自分の作品としてオーロラを撮るのであれば、より実際の感じに近い(肉眼で見るものに近い)写真に仕上げる必要がありそうだ。


2012年10月8日月曜日

ヘラジカ −Alcs alcs gigas−




 アラスカならどこにでもいるヘラジカ。このヘラジカのどこででも見れる姿に興味はない。どこにでもいるくせに、そう簡単に現さない行動を、この目で確かめたかった。それは、ヘラジカがどのような動物なのかを、僕に教えてくれる。



フレーメン行動
秋の繁殖時期になると、オスはメスの臭いによって、自分の行動が決まる。こんな言い方をすると変に聞こえるが、この時期だけに力を集中するオスにとっては、超真剣、大真面目なのだ。

夏まで蓄えたエネルギーを、秋の時期に消費し、冬前に大幅に自分の体重を減らしてしまうオスは、春まで生きるということが最優先なのではない。秋の時期に、子孫を残せるかどうかということが、最優先になる。

※フレーメン行動は、メスの尿の臭いをかいで、メスの状態を探るための行動。とされている。


メスの行動を凝視する


 9月から11月初旬までに、メスは「交尾できますよ」というサインを3回ほど周囲のオスに送る。周囲のオスは、もちろんこのサインを逃さない。力が拮抗するオスが近くにいれば、戦って決着をつける。


彼らは、本能に従って行動してるに過ぎない、と言われたらそれまでだ。生命体とは基本的にそういうものだろう。ではその本能とは?

どの動物においても、植物までもそうであるけれど、地球上すべての生物が、「次の命へつなぐ」ということをする。

このことために、一瞬のこの時期に、立派な角までそのために付けて、全身全霊をかけるヘラジカを、ぼくはより好きになった。

2012年10月6日土曜日

プリンスウィリアム湾 −海の動物−

 
 アラスカも8月になると、気温は上昇し、暖かいところでは25度を上回る。
しかし、海水温は夏でも上がらない。それは雪解け水と、氷河が溶けた水が、夏の間中ずっと流れ込むからだ。


母親(後方)と同じくらいの大きさになった、ラッコの子(手前)

水温5度にもならないアラスカの海で、ラッコは気持ち良さそうに泳いでいる。
ラッコは、海洋性哺乳類の中でも珍しく、厚い皮下脂肪を持たない。 油分を多く含む毛の構造が、水の浸透を防ぎ、ラッコに浮力を与えている。


氷河の末端付近に集まるアザラシとラッコの群れ
彼らの天敵となるのは、海ではシャチのみ。シャチは、氷河が崩壊する轟音をとても嫌うために、この付近には近づいて来ない。このことをアザラシやラッコたちは知っている。


氷塊の上で羽を休めるカモメ
 この氷河のかたまりが、海水面から顔を出している部分は全体のおよそ10%ほど。90%は海の中にあって、アザラシやラッコの休憩場所となるくらいだから、結構安定しているのだろう。



氷上で休息するラッコ
ラッコが海から上がると、その胴体の大きさにいつも驚かされる。体重は、大きい雄で45キロある。

ラッコは、雄と雌のグループに分かれて群れを作り、一定の範囲で行動をともにする。
眠るときに、海の流れに流されてしまわないように、海藻に絡まって寝たり、仲間同士で手をつないで眠ると言うから、一度はそんな姿を見てみたいと思う。


2012年10月1日月曜日

まとまりを作る


 フリップ・トッドは現在、アラスカ州でいちばん多くの仕事を手がける出版社の代表をしている。先日、たまたま彼が僕の写真を土産屋で見つけて、連絡をくれた。

写真集を作らないか、という誘いだった。

会う約束をメールでして、彼のオフィスまで出向く旨を伝えた。

そいえば、動物写真家の岩合光昭さんは、用件があるならそっちから来い、とナショナルジオグラフィックの編集者に言っていたのを何かの記事で読んだ。
そんなくだらないことを思い出しながら、2キロ先のオフィスへ向かった。

もちろん、売れることが確実な写真家であれば、出版社が写真集を製作するのは米国も同じ。
リスクの高い製作では、たぶん初めに自費制作を勧めるのだろう。

おそらく作れば売れる、自費制作の形になるのは仕方がないが、全面的にサポートはすると言ってくれた。

これは確かにチャンスだと思った。トッドの会社はアラスカ中と、アメリカ本土にも卸せる店とのコネクションがたくさんある。

ただ、この機会は、考える必要がある種類のチャンスだと直感した。


来月、シロクマ撮影に行く飛行機に、一席空きがある。
これは飛び乗る。

近所の森で、めずらしい山猫の親子が現れた。
これもすぐ車に飛び乗る。

ギャラリーに数枚写真を飾ってくれないかという誘い。
これもほぼ即答で、お願いしますと言う。

しかし、「写真集」という言葉は、僕にとっては重い。

意識し続けているものの、自分の中でまとめることができたことは、一度もない。
「アラスカ」というテーマでは、まだ写真が足りない。テーマをひとつに絞ってみても、
まだ写真が足りない。
要するに、自分の中で満足のいく、一連のまとまりという物を、所持していない。

今月から2ヶ月間で、考え、企画を提出する、という試みはしてみる。
もちろん本気でやらなければ、やってみたときに成果をきちんと評価できないから、
手を抜かずにやってみよう。

うまく行けば、来年の3月頃に出版される。無理なら今回は断る。