2008年3月2日日曜日

Vincent Munier



下記の投稿の続きになるが、今見返してみると、自分にとっていい指標となるものを見つけた。
同じ時期に海外の動物写真家について研究していたこともあり、その文書が残っていた。自分の興味本位で行っていたため研究というと大げさだが、意外にも詳細までつめて調べていた。ヴァンサン・ムニエというフランスの動物写真家についてである。
その文面を眺めながら思索を試みた。

彼は大自然の中に生まれ育ったため、物心ついたときから自然を愛するようになったそうだ。学生の頃に科学を学び、撮影機材を購入する資金を貯めるために庭師として働いている。

「ワイルドライフ写真の核心部分は野生動物の背景にある」
これは野生の動物を撮ろうとするとき、どのカメラマンでも注意する事だが、「優れたワイルドライフ写真を撮るためには被写体とその行動パターンについての十分な知識が欠かせない」と彼は強調する。右上のアオサギの写真はまさにそんな彼の意思を表した結果だろう。
「モーゼル川の土手で数日を過ごし、アオサギが毎日エサをとりにやってくる場所をつきとめた」彼の撮影スタイルは endurance である。撮影には隠れ場(写真上)を作り、常にカモフラージュすることを心がけている。この中で、時には−15℃の中3日間こもる事もあるという。いかに環境にとけ込み、耐え忍ぶかが重要になるスタイルと言える。

「優れた写真というものは、カメラマンが知識、尊敬、熱意と忍耐の力で題材の信頼を勝ち取ったときに初めて生まれるものであると思う。窮屈なところからではあるが、自然界を目撃する事ができる私は特別な境遇にあると思っている。私は写真を通じて、決定的な瞬間を人々と共有したいと思っているし、人間の周りにある本当に多様な動植物の大切さと脆さを人々にわかってもらうように努力したいとも思っている。」(テリーホープ著:ワイルドライフ 2003 グラフィック社) と語る。

彼の撮影スタイルは、カメラの技術発展に伴い変化するものではないと思う。野生動物と対峙するときには「尊厳」のような敬意にも似た自分に対する戒めが必要だという不変の定理のようなものだろう。様々な撮影スタイルを研究中の今の自分にとっていいアドバイスとなった。


ヴァンサン・ムニエのページ

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