2013年10月3日木曜日

プリンス・ウェールズ島での日記 13


7月4日 
島に入って14日目

 時に考えや思いなどは、高まると、自分のそのときの意思とは無関係に作用するときがあると時折感じることがある。すでにそういうことになる以前に、そのアイデアとなるものは、細分化され、煮詰められ、十分に熟成されていることを条件に発生する。
 なぜかこういうことは、一夜漬けのアイデアではうまく行かず、言葉にしても、伝える側がいる場合に、その言葉は相手の根底にまでたどり着かない。きのう僕が夢中で話し始めた時、アイデアの材料となる論文は、すべて頭の中にあり、それを自分の言葉として話していた。「22個あるオオカミの巣は、すべてオールドグロースにある。Honker Divide のテリトリーの中心にはその主要な森林帯が無いが、一体彼らはどこに巣をかまえているのか。」
 レイモンドは、おそらくオオカミ研究者と話をしていた感覚だったろうと思う。とても具体的な話をした。後半は話が発展して、日本にオオカミが棲息を再開することになる場合、この島のオオカミたちが、日本の生態系に適合するのではないかとか、トラップの方法は改良されて、毛をサンプルとしているが、これはオオカミが通り過ぎたり、地中に埋めてあるトラップを掘り出したときに、毛や皮膚がトラップに残るようになっていて、あとでDNA鑑定により同定するなどの、詳しい研究方法まで話が及んだ。そして僕は、「Do I have a chance to go to the field with you? (あなた方と一緒にフィールドに出かけることは可能だろうか?)」とたずねていた。レイモンドは快く返事をしてくれた。そしてすぐにスケジューリングしてくれて、当日同伴するであろう人と電話で話をしていた。


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